独り言

本当に独り言です

ある夜の巻

鳥が、植物が、人々が寝静まったあと

閑散とした街の隅に

僕らの時間が現れる

 

他人の視線が気になる昼の太陽が

地平線の彼方に帰り

夜がひっそりと迫ってくる

 

夜はそれぞれの本性が出る時間だ

普段昼間に隠しているそれぞれの本性が

世界が光を失うことで輝き出す

 

明るい気持ちになる人

うきうきして踊り出す人

突然饒舌になる人

お酒に呑まれて人格が変わる人

孤独を感じて暗くなる人

夜空に想いを馳せる人

何も変わらない人

 

本来活動時間ではない夜に生きることで

昼間にできないことができるようになる

たとえ見かけは同じ人間でも

昼間に生きる人間と

夜に生きる人間は

きっと別物である

 

ふと思い立って夜中に家を出た

いつもと違う静かな街は

僕らに自由を与えてくれる

色を失った花は

僕らに想像力を与えてくれる

闇に沈んだ川に流れる冷たい水は

僕らに感覚を与えてくれる

なんとなく握ったその手のひらは

僕らに優しさを与えてくれる

空に輝く大きな月は

僕らに時間を与えてくれる

昼間にはない心の動きを

夜は僕らに与えてくれる

 

夜という一時をどれほど満喫しても

その時間は他のどの時間にも代えることができない

その時間はどこにも持ち出せないし

再び同じ経験をすることはできない

かけがえのないその瞬間を

そこで感じた心の動きを

その時を共に過ごした仲間を

僕は忘れることはできない

忘れることがあってはならない

 

心が

身体が

あの夜を覚えている

僕らは夜に生き

そしてまた夜に死ぬのだ

 

あぁ

夜があける

瞼を閉じれば

いつもの生活に戻ってしまうけれども

朝を恐れてはいけない

朝を憎んではいけない

朝は終わりではない

始まりなのだ

また新しい1日が始まるのだ

 

夜は短し歩けよ乙女

僕らの夜はまだまだ続く