酔っ払いの巻
エスカレーターを駆け下りてホームに着いた僕の目の前で電車の扉が閉まった。
1度ならまぁ許せるが1日に2回もやられるとさすがに怒りが湧いてくる。
いかんいかん、悪いのは家を出るのが遅かった僕の方だ。
毎日朝早く起きようとは思っているが、そうは問屋が卸さない。
瞼の上に眠気が乗っかって僕をベットから離してくれない。
目覚まし時計は今日も鳴らない。
そよ風が部屋の窓を開けても僕はきっと気づけないだろうな。
盟友とLINEを交わしながら一人寂しく帰路を急ぎ、山手線に乗ろうと思ったら目の前に広がる吐瀉物。
またどこかの酔っ払いが勢い余って吐いたのだろう。
酒は飲んでも飲まれるなと教わらなかったのだろうか。
帰る時くらいゆっくり休ませてくれ。
そんなことでいちいち気分を害したくない。
1年生の時に取っていた必修科目の先生が、生徒の大半が未成年と知っているはずなのにお酒の話ばかりするのにうんざりして、絶対にこの人のゼミには入らないと決めたのだが、今年入ったゼミの先生も未成年の前でお酒を例に出してきやがった。
大人ってのはなんでもかんでも酒の話にしたいのかな?
飲んだこともねぇ酒の話を説明されるのはもううんざりだ。
大概にしてくれ。
僕はお酒が嫌いだ。というのはやや間違っていて、本当はお酒より酔っ払いの方が嫌いだ。
こうなったのも、高校時代に酔っ払って道端で吐いた跡を朝登校中に見かけたり、酔っ払って駅前のロータリーで輪になって校歌を合唱しているどこかのバカに遭遇したりしていたからなのだが。
別に酒に酔う分には全然文句はない。
僕はまだ未成年なので酒を飲んだことはないが、お酒に酔っていても楽しそうな人はたくさん見るし、実際楽しいんだと思う。
だけど酒に酔って周りに迷惑をかけるようなクソ野郎は別問題だ。
身内で少しやらかすくらいの互いの許容範囲内での迷惑ならまだギリギリ許せるが、何も知らない赤の他人に迷惑をかけるようなやつは大嫌いだ。
そんなやつは豚小屋の中に放り込まれて泥まみれになってしまえばいいと思いながら今日も改札を通る。
思いがけず踏んでしまった吐瀉物を地面に擦りつけながら帰る人を遠目に見ながら、足元には気をつけた方が言いぞと心の中で言い聞かせる。
20歳まであと3ヶ月。
正しいお酒の飲み方でも今のうちに勉強しておくかな。