独り言

本当に独り言です

蜜の味の巻

雨が上がって夏がやってきて、

身体に溶け込む日差しが優しくて暖かくて、

少しばかり腕まくりをして空の下を歩く。

 

日々はいつも変わっていって、

空の色も、

光る川面も、

背中を押す風も、

ひとつとして同じものはない。

毎日その違いに気づくのがとても楽しいし、

それのおかげで毎日飽きずに生きられるし、

それを見つけるのを楽しみに毎日を生きている。

 

けど、

日々の中には変わってほしくないものもあって、

変わってしまうことが怖くて、

変わってしまうことに耐えられない自分もいる。

昨日まで当たり前だと思ってしまっていたことが、

急に手をすり抜けてなくなってしまって、

でも僕はそれを失った時に、

代わりになるものを見つけられないから、

なにもないところを必死になって探して、

空虚を掴んで、

助けを求めてしまう。

 

苦しい。

とても苦しい。

手の届くところになにもない寂しさと、

このままなにも残らないんじゃないかという焦りが、

身体の中を駆け巡って、

いてもたってもいられなくなって、

気を紛らわせようとして携帯を開くけれど、

そこには真っ黒の液晶画面しかなくて、

電源をつけたり消したりして、

アプリを開いたり閉じたりして、

何度も何度も確かめるけど、

何度やってもそこにはひとつの暗闇があるだけ。

その暗闇は決して僕を助けてくれないし、

僕はそれを知っているけれど、

でも今は、

それに縋るしかない。

なんて弱いんだろう。

 

一度蜜の味を知ってしまうと、

もうそれを知らない時には戻れない。

最近有名人が薬物で逮捕されることが多いけど、

彼らも戻りたくても戻れなかったのかな。

それならいっそ、

知らない方がどれほど楽しいだろうか。

 

知ってしまった喜びと、

それを手放した時の悲しみを、

天秤にかけることができなくて、

結局失った時に、

こんなことなら知らなければよかったって言ってしまうけど、

知らなかった時の喜びと、

知ってしまった喜びを天秤にかけたら、

知ってしまった喜びがきっと勝つだろうし、

知らないことの怖さの方が数倍恐ろしい。

 

だから結局知ってしまいたいと思うのは、

僕のエゴなのだろうか。

自分自身のわがままに、

自分自身で翻弄されて、

辛い思いをするのはいつも自分自身だ。

 

強い人間でありたかった。

けど、

弱い自分を知ってしまった。