独り言

本当に独り言です

真夜中の巻

白くひかる窓に朝を感じて、

僕はそっと携帯を閉じた。

 

電話してたんです。

夜中の間ずっと。

大切な仕事の話と、

今後の話と、

他愛ない友達の話。

楽しいよね。

そういうのって。

 

真夜中に始まった会話は、

途切れることなく、

時間の流れに寄り添って進む。

夜と朝が交わって、

おはようとおやすみがすれ違う。

スピーカーの向こうの声は、

とてもバラバラで、

艶やかで、

鮮やかな色をしている。

 

夜中に電話するなんて、

学生っぽいなってちょっと楽しくなったりするけど、

みんなはそういうの当たり前なのかな。

高校までは僕が夜に生きていなかったから、

こういうのが特別に感じるだけなのかな。

 

夜中しか味わえないこの高揚感と、

気持ちとは対照的に落ちていく声が、

静かな夜に広がっていく。

スピーカーから溢れる声が、

僕のちいさな部屋を隅々まで満たしていく。

今この世界に生きている人が、

僕以外にもいるのだ。

電話の向こうに、

僕と同じように生きている人が、

いるんだ。

それだけで楽しい。

嬉しい。

今だけの、

この電話が繋がっている間だけの世界が、

ここに存在する。

昼間は忙しなく動く街も、

森のように静かに佇んで、

僕らの世界には干渉してこない。

 

声だけで作られた世界。

ただそこにある命。

音だけが生きている。

 

すずめの大きな鳴き声と、

新聞配達員の荒い息遣いが聞こえてくる。

いつの間にか朝が来てしまった。

世界が動き出す。

電話越しに形成されていた世界が、

朝日とともに、

窓の外に拡張されていく。

自分の部屋に溜まった世界の切れ端が、

光に呼び寄せられるように窓から流れ落ちて、

地平線を白く染め上げる。

せっかく3人だけの世界だったのに。

時の流れはたまに僕らを嘲笑う。

文明の益によって作り出された仮想現実と、

現実が交わる朝。

 

春はあけぼのって言うけど、

春以外も朝はいいよね。

動き出した世界を見届けて、

僕は布団に入る。

目を閉じればそこは、

世界とは一線を画す夢の世界。

色々なところにある世界。

結局捉え方次第でなんとでも言えちゃうんだよな。

 

4時間の通話と真夜中を交換したら、

朝が待ちきれずにやってくる。

 

最初から最後まで、

ずっと迷子な文章になってしまった。

僕の文章能力も、

夜の世界に置いてきたかな。