2019-08-03 秘密の巻 どれだけ寂しいと嘆いても、 二度と夜は帰ってこないから。 この瞬間が、この感触が、 逃げてしまうのは怖いけど、 朝は容赦なくやってくる。 夜に置いてきた忘れ物は、 朝になると取りに帰れないから。 朝日の差し込む部屋の隅で、 空っぽの手のひらをのぞき込む。 結局手元には何も残らなかった。 思い出そうとした感触も、 ちゃんと思い出せなくて、 思い出したかった感情も、 いつの間にかどこかに忘れてきてしまったようで、 虚構を掴もうと必死になる手を眺めることしか出来ない。 これは、 私と夜が結んだ秘密の物語である。