独り言

本当に独り言です

猟場の巻

1人で買い物に行くということは、

店舗という猟場の中で、

店員というハンター達の視界をかいくぐり、

目当ての商品をゲットすることにほかならない。

 

今回の猟場はヨドバシカメラ新宿西口本店。

目当ての商品は2ヶ月程前に発売された、

Beatsの完全独立型ワイヤレスイヤホンである。

 

ハンター達の目は建物に入る前から既にギラギラしており、

建物前で何故か催されていた祭りを避けようとすると、

すぐ彼らのセンサーに引っかかる仕組みになっている。

 

しかも西口本店は、

建物毎に取り扱っている商品が違うらしい。

目当てのコーナーであるオーディオ機器を探している間に、

店の入口で呼び込みをしている男性店員に話しかけられそうになり、

咄嗟に祭の人混みに紛れる。

こういう時に人混みは便利だ。

 

人混みに紛れる直前に見つけた案内板を頼りに北館に到着。

混沌の中に秩序がギリギリ形を保っている程度の店内では、

上の階に繋がる階段を探すのも一苦労だ。

今は新型iPhoneが発売されて間もない時期であり、

1階のハンター達は、

新型iPhoneの契約に来た外国人旅行客との格闘で精一杯に見える。

 

しかしここで階段が見つからないかと言って立ち止まっている様では、

ハンターに眉間を撃ち抜かれて即死である。

殺されないためには常に動き続けなければならない。

迷っている素振りは一切見せず、

ただひたすら前を見て、

通路を一直線に進んでいく。

 

なんとか階段を見つけて上がると、

ちょうど階段の目の前に、

お目当てのイヤホンの体験ブースがあるではないか。

 

これは面食らってしまった。

階段を上がってから、

1回気持ちを落ち着けるために、

買いもしない金属の塊を眺めてから、

目当てのイヤホンを見に行こうと思っていたのに。

 

ハンター達は我々の1歩先どころか2歩先まで見ていると言うのか。

あぁ恐ろしい。

 

ブースの店員に気づかれないように大回りしつつ、

ブースの中身が見えるギリギリの距離を保ち、

たまたま近くにあった骨伝導式のイヤホンを眺めながら、

「へぇ~最近はこんなイヤホンも売っているのか~」と小声で口ずさむ。

見た目は若いくせに、

中身はおじさんのカスタマーの出来上がりである。

 

あとは人気がある時にしれっと何食わぬ顔で近寄り、

お気に入りの色を選別し、

ハンターに気づかれる前に商品の引換券をくすねれば完璧だった。

 

しかし結局その機会は訪れず、

私より明らかに年下の知念侑李似のハンターに声をかけられ、

全然悩んでいないのに買うのを悩んでいる様な芝居を打ち、

あたかもハンターの説得に負けて購入するような仕草を見せ、

ようやく購入に漕ぎ着ける。

 

別にここまでしなくていいのはわかっているが、

やってしまうんだから仕方がない。

1人の買い物は、

消費エネルギーが半端じゃない。

できるだけ買い物は、

2人で行きたいものだなぁ。