独り言

本当に独り言です

晩夏の巻

暦の上ではめちゃめちゃ秋なんだけど、

気温は全然秋じゃないね。

まだまだ半袖半ズボンが、

手放せそうにない。

明日が今年最後の真夏日の予報だっけ?

夏は早く秋に道を譲ってやってくれ。

今年は紅葉が遅くなりそうだ。

 

1週間前には咲いていた近所の曼珠沙華が、

今日見たら枯れていて、

少し残念。

生けるものには終わりがあるし、

その儚さ含めて美しさなんだろうけど。

もうちょっと見ていたかったな。

 

今年も実はあと2ヶ月しかないよ、

って友達に言われたけど、

2ヶ月の長短がわからないくらいには、

既に時の流れに興味がないのかもしれない。

 

先のことを考えてもどうにもならないしね。

先のことを考える機会は死ぬほどあるけど。

とりあえず今をなんとかやり過ごすしかない。

考えるのは今日と明日が精一杯。

来週何があるかなんて、

全然覚えていない。

 

夏のエンドロールが流れてきて、

木々の間を抜ける風も、

少しばかり乾いてきた。

シーズンを過ぎた観覧車は閑散としていて、

券売機も目を閉じて眠っている。

名前も知らない大きな鳥が、

海風に煽られて視界から消えてゆく。

 

松林の中には静寂があって、

風に揺れる葉の声がする。

ランニングしてるおじさんと、

ロードレースのバイクに乗ってるお兄さんには、

どうやらそれは聞こえていないみたいだ。

 

池に不時着した大きな鳥が、

慌てた気持ちを隠すかのように、

平静を装って浮かんでいる。

今日は風が強い。

そんな日に無理して飛び立たなくてもいいのに。

 

午前中の雨は嘘のように止んで、

取り残された雲と、

遅れてきた夕日が、

群青の水面にオレンジを垂らす。

 

冬になったらもっと鮮やかだけど、

冬はこんな穏やかな気持ちで、

見つめることはできないだろう。

きっとダウンジャケットのポケットに、

皮膚の荒れた両手を突っ込んで、

首を竦めてとぼとぼ歩いている。

 

呑気に上を向いて歩ける季節も、

そう長くは続かない。

冷たいアスファルトに目をやりながら、

足元に群がる芝の毛並みを見ながら、

無慈悲な風に背中を押される季節が、

もうそろそろやってくる。

 

その前に、

最後に見た空の色が、

オレンジだったらいいなぁ。

満天の橙を目に焼きつけてから、

冬を迎えたい。

 

そこのけそこのけ、

秋が通る。