夕暮れの巻

久しぶりに、

自宅のベランダから夕焼けを見た。

いつもこの時間は家にいないからなぁ。

今日の夕焼けは、

少し幻想的で、

少しおぞましかった。

夕日に照らされた富士の影が、

天を這うように動く雲に映る。

天地がひっくり返るんじゃないかと思うくらい、

雲は低く、

分厚く、

重かった。

最近の自分の生活に、

いい意味で暇な時間がなかったせいで、

全然YouTubeを開いてなかった。

数週間ぶりにYouTubeを開いて、

後で見るリストを開く。

溜めに溜めていた曲たちは、

いつの間にか700曲を超えていた。

こんなの何日かかったら全部聴けるんだよ。

諦めてYouTubeにおすすめされた曲から聴き始める。

YouTubeを聴くのに飽きて、

ベッドから降り、

ピアノに向かう。

つい最近まで、

毎日のようにピアノを弾いていたのに、

ちょっと時間を置くだけで、

意外と体は忘れている。

割と練習した曲だったのになぁ。

右手も左手も、

以前のように上手く回ってくれない。

もう1回練習しなおさなきゃ。

適当にアドリブで弾きたい曲を弾いて、

しばらくして飽きてピアノを閉じる。

テレビをつけても面白い番組はやっていない。

仕方なく録画を漁るが、

どうも見る気になれない。

録画していたおげんさんと一緒はまだ見れていない。

もしかしたらこのまま見ずに終わるんじゃないかな。

あの番組は“なまもの”だから。

なまで見れなかったら、

ちゃんと見るのに少し勇気がいるような気がする。

画面を戻したら、

ラグビーワールドカップの準決勝を中継していた。

戸棚からお菓子を持ってきて、

椅子に座って画面を眺める。

長い影が部屋に入ってくる。

何も無い、

ある日の夕方のお話。