独り言

本当に独り言です

夕焼けの巻

冬は空気が澄んでいるから、

空の色がとてもきれいに見える。

 

午前中に私を苦しめた雨雲は、

午後になると遥か彼方に消えてしまったみたいで、

帰る頃には茜色の空が広がっていた。

 

「夕日がきれいだ」と北を向いている私が言った。

私の視界の中に夕日はない。

当の夕日は今まさに西の空の果てに消えようとしているからである。

だが私は言った。

「夕日がきれいだ」と。

 

私にとってきれいなのは、

遠くの山の端に沈み行く夕日ではなく、

夕日によってオレンジ色に染まる風景なのかもしれない。

私は専ら夜型の人間なので、

朝焼けというものを見たことは、

ディズニーに開門前に並んでいる時以外ほとんどないが、

きっと朝焼けよりも夕焼けの方が、

私にとってはきれいに見えるのだろう。

 

朝日は距離が近すぎる。

変な圧迫感というか、

余計な力強さのようなものを感じる。

夕日は遠くにひっそりといて、

余計な干渉を一切せず、

ただゆっくりと時を流すだけのように感じる。

 

朝が来なければいいのにと願ったことは数え切れないほどあるが、

夜が来なければいいのにと願ったことはほとんどない気がする。

 

無意識のうちに、

私は朝に対して少しの嫌悪感を抱いているし、

夕暮れに対して少しときめきを抱いている。

 

白い光に包まれていた世界が、

少しずつ橙に浸食されていく、

その過程を眺めているのが、

私は好きだ。