蕾の巻
東京で桜の開花宣言が発表されてから数日。
うちの地域でもそろそろ咲いているだろうと思い、散歩がてら桜を探すことにした。
自宅のベランダから外を覗いてみても、全然ピンク色は視界に飛び込んでこない。近くでは桜は咲いていないのかと思って下に降りてみると、家のすぐ傍の桜の木に、少しだけ咲いている桜を見つけた。
木全体としてはまだ2分咲き程度だったが、それでも少しずつ近づく春を感じることが出来た。
近所の公園は軒並み0分〜5分咲きだったので、少し足を伸ばして緑道を南下し、近くの川まで行ってみた。
川の近くの桜は毎年咲くのが少し早くて、そこが近所で一番早く、春を運んでくる場所なのだ。
行ってみると案の定、川の流れに沿って、8分咲き程まで咲いている桜の木が並んでいた。
一部は川の上にまでせり出ていて、水面に花びらを映している。
早く咲いている桜は、白だったり紅色だったりと様々だが、見慣れた薄ピンクの桜はどうやらまだ咲いていないみたいだ。
ここから芽吹いていく多くの花を看取ってやりたいという、ある種親心のような気持ちを抱いている自分に気がつく。
別にそこまでこの木に思い入れがあったりする訳ではないはずなのに。
景色の中に思い出が浮かぶ。
ずっと見てきた桜並木に、今年もそろそろ会えるのだ。
家の近くまで帰ってくると、太い幹から伸びていく枝々の先に、大きく膨らんだ蕾が散りばめられている。
この蕾たちも、あと数日すれば花開くのだ。
蕾の中から飛び出してくる凛々しい花弁を想像すると、開花が楽しみになってくる。
あと数日の出会い。
そして、あと数日の別れ。
来週は軒並み雨の予報が続いている。
春の雨を超えて、どうか立派な大往生を見せてくれ。
風に乗って流れゆく桜の花を思い浮かべる。