鎌倉の巻
片付け週間5日目。
中1日空いただけで片付けの要領を忘れてしまう、鶏以下の頭と戦いながら部屋片付けに勤しむ。
今日は担当区分は主に旅行関連の思い出の仕分けだった。
机の中を整理していて出てきたたくさんのパンフレットを、なるべく行った順になるように収納していく。
もう同じような所に何回も行っているせいで、果たしていつ行ったのかわからないものも多くあった。
例えば鎌倉に関しては、記憶にあるだけでも4回は訪れている。
私は鎌倉の紅葉を見に行くのが好きで、11月の下旬から12月の上旬にかけて、中高生だとちょうど期末テストが終わったあたりに、テスト終わりのお祝いを兼ねて鎌倉に1人で行っていた。
ルートはだいたいいつも決まっていて、朝8時に北鎌倉駅に降り立ち、そのまま円覚寺に入る。
円覚寺では階段を登って境内の1番奥までぐるっと回り、そのまま入り口近くの細い階段を上がって鐘楼の所まで行くと、朝日に照らされた輝く紅葉が山に敷き詰められているのがよく見えるのだ。
明月院の丸窓は東を向いているので、朝向かうと煌びやかな橙色が窓の外からすっと差し込んで、部屋全体を温かく染め上げるのである。
冬の入りで気温は低いが、その景色を見ると、少しばかり暖かさが広がっていく感じがするのだ。
円覚寺からは細い歩道を苦労しながらすれ違い、建長寺に向かう。
ここは、1番奥の半僧坊まで登っていくと、遠くに富士山や相模湾を望むことができるのだ。
紅色の山からのぞく2つの青が美しい。
そして小町通りで昼食をとって、江ノ電で長谷駅まで出たら高徳院で鎌倉大仏を拝む。
そして最後に、夕方ももう日の暮れようかという時間にたどり着くのが、長谷寺である。
階段を登って本堂に入り、上を見上げると大きな十一面観音と目が合う。
この観音様の恐ろしいことに、どうも見つめあってしまうと自分はなにか悪いことをしているような、また全てを見透かされているような気分になって、しばらくそこから視線を逸らせないようになってしまうのだ。
神様の前では隠し事はできまい。そう思わされるような空間が、そこに広がっているのだ。
旅の最後に心を洗われて帰るのがとても清々しい。
去年は紅葉を見に行けてないし、今年は見に行こうかな。
そんなことを考えながら、お寺のパンフレットをファイルに綴じる。