夜風の巻
日が長くなった。
4時半に落ちていた太陽も、最近は6時過ぎまで西の空で立ち止まっている。
夕暮れも長くなった気がするし、窓から橙が差し込む時間は、明らかに長くなっている。
2時から5時くらいの時間の進み方が、遅くなったように感じる。
その分夜はひっそりと、ゆっくりと日常に溶け込んできて、気がつくと、太陽は地平線の向こう側に旅立っている。
夕方になっても寒くならないから、窓を開けていても時間の経過がわからない。
2週間前くらいまでは、窓から入ってきた風が時間を教えてくれたのに、今ではいつでも同じような顔をするもんだから、夜になっても窓が開きっぱなしになっていたりする。
外では暴れ放題の風も、部屋に入ると途端に静かになる。
私を包んでくれるし、私に寄り添ってくれる。
それが気持ちいいもんだから、つい簡単に心を許して窓を開けっ放しにしてしまうけど、さすがにずっと開けておくわけにはいかない。
仕方がないから、私は夜風にさようならをして、そっと窓を閉じる。
そして、夜風の残骸を布団にくるんで、朝日が昇るのをゆっくりと待つのだ。