独り言

本当に独り言です

雨の残り香の巻

雨のにおいがした。

正確には雨の後のにおいだ。

雨の残り香かもしれない。

 

私は雨の残り香が好きである。

湿った地面から漂う香り。

本当に地面から漂っているかはわからない。

だって地面のにおいをちゃんと嗅いでないから。

 

あの香りの正体はよくわからないが、雨の残り香ということにしておこう。

なんだかそっちの方が粋な気がする。

 

濡れたアスファルトを見るだけで、なんとなく雨の残り香が漂ってくる気がする。

それに加えて、頭の中には雫のたれた紫陽花の葉が浮かんでくる。

今年は紫陽花も見に行けないかもしれない。

約束したのにな。

 

景色が匂いを補完し、匂いが景色を補完する。

そんな不思議な世界。

 

今日、関東近県は、雷を伴った大雨に襲われていた。

風呂から出てきた母親は、怪訝そうに「雷まだ鳴ってる?」と聞いてきた。

鳥頭の私は雷が最後にいつ降ったかなんて、いちいち覚えていやしなかったが、「もう終わったよ」と答えた。

 

別にそんなことを覚えている必要はなかった。

窓から入ってきたのは、雨の残り香を纏った風だったから。