午前中の巻
木曜日から梅雨に入るらしい。
ついに春ともお別れである。
既に日中は30度近くまで気温が上がっているから、もう春と呼ぶのは間違っているのかもしれないが、とりあえず梅雨が来るまでを春と呼ぶことにしよう。
春はあけぼのと言うけれど、そこまで早起きをしていなかったから、白くなりゆく山際も、紫だちたる雲も見ていない。
あけぼのの良さはよくわかっていないが、私は最近、午前中の風景がとても気に入っている。
私の言う午前中は、大体9時〜13時くらいのことを指すのだが、なぜこの時間帯なのかと言うと、木々の緑がとても綺麗に見えるからである。
真上から太陽の光を浴びて、綺麗な深緑が目に飛び込んでくる。
空もはっきりとした青空で、晴れていれば影がしっかり地面に映る。
時折穏やかな風が吹けば、もう完璧である。
夕暮れの風景もそれはそれで綺麗だし、特に水面に太陽光が反射して煌めく姿は言葉にならないものがあるが、この時間だと木々の緑もだいぶ黄緑がかって、場合によっては茶色のようにも見える。
そのあたりを総合的に加味すると、結局私は午前中の風景が好きなのである。
思い返せば、大学に行く時も、一限や二限の時間帯に豊かな緑を眺めながら歩くのを楽しみにしていた。
雲ひとつない青空を見上げたり、木漏れ日の揺らめきを感じたり、鳥の囀りに囲まれたり、そういう午前中の時間帯は、ずっと前から私にとって大切な時間だったのだ。
生活リズムが崩れると、ついつい夜型になって、起きたら昼過ぎなんてこともあるけれど、早起きじゃなくてもいいから、9時とか10時起きでいいから、少しだけ、午前中の美しさを感じてほしい。
これを逃すのはもったいないとまでは言わないけれど、悪くない時間だと思っている。