おつかいの巻
父親のおつかいで、久しぶりに都会に出た。
自転車で1時間くらい、強い風に負けないように必死でペダルを漕いだ。
マスクをしているせいで息が上がるのが早い。
途中で、知らない商店街に出た。
住宅街の隙間を縫うように、多くのお店が連なっている。
普段の人通りがわからないから、どれくらい混んでいるのか判別はつかないが、自転車で通るのが申し訳なくなる程度には混んでいたとでも言っておこう。
仕方なく自転車を押して商店街を通り抜ける。
時折風に乗って流れてくる練り物のにおいがちょっと優しくて、迂闊に涙を零しそうになった。
ふとした優しさが心に染みる。
商店街を出てさらに自転車を漕ぐと、目的地に到着した。
駅前の大きなバスロータリーは、たくさんの人でごった返している。
人頭の多さに気分が悪くなりそうだった。
右を見ても人、左を見ても人、前も後ろも人だらけ。
久しぶりの光景に、目が眩んだ。
駅から少し離れた公園に自転車を停め、そそくさと買い物を済ませて、雑然とした駅前から抜け出した。
そこから、どういう道を通って帰ったかは覚えていない。