断髪の巻
遂に髪を切った。
私の記憶が正しければ、約200日間放置されていた私の髪の毛。彼らと遂にお別れした。
今まで「特に切る理由がない」という理由で、昨年の緊急事態宣言後の6月末から、ずっと髪を切るのをサボっていた。
それから約半年が経ち、既に1月の6日。荒れ放題の私の頭頂部に、ハサミを入れることにした。
理由は特にない。
強いていえば、両親から「髪を切りに行くように」と勅命がくだり、1ミリも同意していないのに「今日は何時に髪を切りに行くんだ?」と、さも私が今日髪を切りに行くと言ったかのような振る舞いをされたからである。
切る理由はなかったが、それ以上に断る理由もなかった私は、渋々外着に着替えて外に出た。
私は物心ついた時からずっと、1000円カットで髪を切ってもらっている。知らない人のために説明すると、1000円で髪を切ってくれる所だ。
ここに通い続けている理由も特にないが、私は髪型はある程度整っていればそれでいいと思っているし、カラーとかブリーチとか遊ぶ気もない、なんなら未だにヘアワックスすら使ったことがないくらい、髪型というものに無頓着な男である。ただ髪を切るだけで数千円も消えるのは、私にはもったいない。
ついでに言えば、1000円カットは店員とのやりとりがマジで最小限で済む。事前に予約とかに無駄な時間を取られないし、注文も奇抜じゃなければ多分普通に通る。ある程度整えるだけだから、別に雑誌とかを見て気に入った髪型を選ぶような時間もない。口頭でなんとなくどれくらい切ってほしいか言えば、あとは黙っていれば勝手に髪が切れている。それにご時世も多少は関係しているだろうが、マジで店員さんが話しかけてこない。最高。
担当の指名みたいなものはもちろんないし、カットの出来上がりは人によって当たり外れがあるが、そのギャンブル性すら面白みがある。店員さん2人で、片方が上手い、片方が下手な時、どっちが早く終わって自分の担当になるのか、めちゃめちゃドキドキする。楽しい。
そんなこんなで店について、2分の1の賭けを外し、髪を整えてもらって外に出た。
どのくらい切ったかは上手く表現できないけれど、多分7~8cmくらいは切ってもらったんじゃないかな。
店を出て、イヤホンを耳にかける時、髪の毛が邪魔してこないことに気づいた。
冷たい風が頬に当たる。
急に寂しさが襲ってきた。
私を守ってくれる長い髪は、もうここにいないのだ。