独り言

本当に独り言です

衝動の巻

机の上には、2冊の新書と6冊の文庫本が置かれている。そのうち半分は、森見登美彦の小説であった。

 

休日の昼間に暇を持て余して、溜まっていた映画の録画を見ていた。

タイトルは「夜は短し歩けよ乙女」。星野源花澤香菜が主演の声優を務めた、森見登美彦の同名小説が原作のアニメーション映画である。

私は星野源が主演というだけで劇場まで映画を見に行ったのだが、久しぶりに改めて見返すと、心底どうでもよさそうな小さなことを無駄に大きく広げ、まくしたてるようでありながら軽妙なその語り口に感服してしまった。

そして映画を見終えて原作を読み返した結果、私はその踊るような文体に完全に心を鷲掴みにされてしまい、他の小説も読んでみたいといてもたってもいられなくなってしまった。

幸い貯金箱を開いてみたら、使い古されて歪んだ5000円札が1枚残っている。こういう時のために貯金はしておくものだと思いつつ、私はその一葉をそっと財布に忍ばせ、古書店に自転車を飛ばすことを決意したのだ。

 

正月の明けたブックオフは、年末の大掃除で処分されたらしき本で賑わっていた。

昨年の緊急事態宣言以降、このブックオフには2ヶ月に1回くらいの頻度で通っていたが、小説を買いに来たのは初めてである。

小説というのは、実用書に比べてパッと見で当たり外れがわかりにくく、それでいて話を理解するのにそれなりに体力を使うものだから、最近は買ったり読んだりするのを少し避けていたところがあったけれど、今回は明確に読みたい本が決まっていたのがよかった。他の作家には目もくれず、躊躇なく森見登美彦の棚を探した。

彼の著作は先述の「夜は短し歩けよ乙女」以外読んだことがなかったが、そんな私でも名前くらいは知っている「有頂天家族」と「四畳半神話大系」があったのでそれを手に取った。あとは彼のデビュー作の「太陽の塔」と、完全にジャケ買いの「夜行」を手中に収め、その他諸々その場で気になった数冊を合わせてレジに持ち込んだ。合計で980円。ブックオフは、お財布事情に一抹の不安が翳る私を救うために作られたお店かもしれない。そう思いながら会計を済ませた。

 

こうして話は冒頭に戻る。私の机の上には、森見登美彦が4人もいる。森見登美彦のおしくらまんじゅうだ。

この均衡状態を崩すのはまた別の機会になるけれど、全てを読破するのが今から楽しみである。

さて、どれから読み進めてやろうか。