旅行の夢の巻
不思議な夢を見た。
多分、修学旅行の夢だったような気がする。
でも、メンバーは大学の同期だったし、先生の姿や大人数で泊まれる宿は見れなかったから、修学旅行じゃないのかもしれない。
場所は海沿いの街だった。
僕は友達と車に乗っていた。友達が運転席で、僕が助手席。友達の顔は覚えていない。
季節は夏。袖をまくった腕に、太陽の光が痛いほど差し込んでいた。
海の近くにある小高い山を車で降り、大きな信号を左折した瞬間、目の前に青い海が飛び込んできた。
車内にはゆずの「夏色」がかかっている。後部座席に人の気配を感じたけれど、実際に誰かがいたのかさえわからない。
僕はずっと、目の前に広がる風景と、運転手のハンドリングを交互に眺めていた。時々サイドミラーに写った自分の間抜けな顔を見て、半ば呆れた気分にもなったように思う。
海岸線沿いに車を走らせていると、突然車が加速しはじめた。横を確認すると、運転手がハンドルから手を離し、ぐったりしていた。どうやら気を失っているらしい。そのくせ、アクセルの上にはしっかり足が残っている。
本来ならば、運転手をどかしてアクセルを離すか、最悪サイドブレーキで強引に止めるかするような気がするが、その時の僕は何故か必死にハンドルを掴んで車を操ろうとしていた。道路は長い直線だったが、視界の端に左カーブが見えた。
どう考えても今のままではあのカーブは曲がりきれない。なんなら今も車は加速している。後部座席に座っている“何か”は、ただ何もせずにそこにいた。
車は猛スピードでカーブに突っ込んだ。僕は必死にハンドルを左に切った。ものすごい遠心力で体が右に持っていかれる。
そして、僕らはそのままガードレールを突き破り、海の上に放り出された。
一瞬の静寂、そして次の瞬間…
生暖かい南風が私の頬をそっと撫でた。
目を開けると、窓からさしこむ太陽の光がうるさい。
タオルケットを蹴り飛ばし、白く光る天井を見上げた時、私はようやくそれらが夢だったことに気がついたのであった。