独り言

本当に独り言です

信号待ちの巻

ミンミンゼミが3匹入った虫かごを、大事そうに抱えて歩く女の子を見かけた。

その時、私は夏を思い出したのであった。

 

自転車に乗っていると、今が夏であることをすっかり忘れてしまうことが多い。それは自転車で走ると風が吹いて涼しく感じるからかもしれないし、自転車を漕ぐことに熱中しすぎて暑さのことを忘れているだけなのかもしれない。どちらにせよ、自転車で街中を駆け抜けている時は、季節すら置き去りにしているかのような感覚になるのだ。

 

今日も私は、買い物のために自転車を走らせていた。

そして、とある交差点で信号待ちをしている時、たまたまその少女の姿を認めたのであった。

 

透明なプラスチックでできた小さな虫かごが、少女の腕の中にすっぽりと収まっている。その中では、ぎゅうぎゅう詰めにされたミンミンゼミが、じたばたしながら必死に泣きわめいていた。

 

よく考えてみれば、この瞬間が、私が今年初めて蝉の姿を見た瞬間だったかもしれない。

私はその時、少女の手のひらの上に、夏を見た。

 

1週間前から、自然のBGMに加わっていた蝉の声。私はそれを認識してはいたが、どこかでまだ半信半疑の状態だったのだろう。

しかしその瞬間、私の目の前には間違いなく“それ”が存在していた。小さなケースに入れられた“それ”は、紛れもなく生きていたのだった。

 

信号が青に変わって、私は再び自転車を漕ぎ出した。

背中に、うっすら汗が滲んでいたのがわかった。

 

今日の1曲

マハラージャン -示談[リリックビデオ] - YouTube