立ち漕ぎの巻
立ち漕ぎにはロマンがある。
普通に座ってママチャリを漕いでいても、全然面白くない。
でも、ペダルにしっかり足をかけて、少しだけ立ち上がってみたら、世界がちょっとだけ面白くなる。
立ち漕ぎすると、目線が高くなる。
普段の1.5倍高いところから、世界が見渡せる。
いつもより遠いところが見える。
隣の生け垣の向こうが見える。
街がいつもと違った角度から見える。
見えていなかった世界が、少しだけ見えるようになる。
立ち漕ぎすると、スピードが変わる。
座っている時より、立っている時の方が、スピードを自由に変えられる。
速くなりたかったら、思いっきりペダルを踏み込めばいい。
遅くなりたかったら、ギリギリまでブレーキをかければいい。
実は、立ち漕ぎの方が遅くてもふらつきにくいらしい。
どれだけ速く走るのも、どれだけ遅く走るのも、立ち漕ぎなら自由自在だ。
立ち漕ぎすると、たくさん風に触れられる。
向かい風だとしんどいけれど、追い風なら最高だ。
青葉の香りをふんだんに織り込んだ夏風に、背中を押されて街を駆ける。
これならどこまでも行けそうだ。
立ち漕ぎにはロマンがある。
明日はどこに行こうか。