昼下がりの巻
昼下がり。
夏の気配を消した灰色の空に、虚しく鳴く蝉の声。
雨を運んだ冷たい北風が、よそよそしい態度で私の前を通り過ぎる。
こんな時、私は漠然と死にたくなるのである。
時折窓から入ってくる北風が、私のみぞおちを穏やかに貫く。
針のように、無神経に、躊躇なく、私の体を貫く。
ひゅっと縮んだ私の心臓と、体をなぞるように、それでいて刺すように吹く北風。
その居心地の悪さ。
夏の暑さと違って、北風は悪気のない素振りで近づいてくる。
そして、すっと刺して、すっと抜けていく。
胸の奥で生まれたわだかまりが、小さな渦を描く。
終わらない循環。
特に何をするでもなく、ただそこにある。
ただ、そこにある生命。
気味が悪い。