独り言

本当に独り言です

上映後の巻

映画館で映画を見ると、ちょっとだけ嫌な気分になる時がある。

でも、誰も悪くない。誰も悪くないから、余計にわだかまりが残る。

 

私の気分が悪くなる時、それは両サイドの肘掛を両方とも他人に占領されている時でも、周りの人の鑑賞マナーが悪い時でも、目の前の人の背がデカすぎて画面が全然見えない時でも、エンドロールが始まった瞬間に帰ろうとする人がいる時でもない(実際にあったら嫌な気持ちになるかもしれないが)

それは、映画が終わって場内が明るくなり、観客が帰りだした時である。

 

普通、どの映画館も上映終了とともに場内が明るくなる。

そして、多くの観客はそれを合図に帰る支度をして席を立つ。映画館によっては、係員が上映終了とともに出入口のドアを開け、場内に入ってきて退場を促す場合もある。

普通の人はここですんなり帰るのだが、私はこの時間が苦手であった。

 

それまで2時間弱、食い入るようにスクリーンを眺め、ストーリーを追い、登場人物を追い、移ろう画面を追ってきた。

それゆえ、エンドロールを終えて、場内の照明がついても、私の目はしばらくスクリーンに釘付けになっている。そしてその時、私の心はまだ作品の中にいるのであった。

 

映画が終わっても、座席を離れるまでの間はある種現実と夢の中間領域にあたる。その中間領域において、私は映画を見終えたことを実感し、そしてその映画を見た余韻に浸るのだ。

そして、たかが照明がついたくらいで、この中間領域から現実にすっと戻ってこれる訳がない。なぜなら、最終的に夢と現実を隔てるものは視座の移動であり、席を離れることだからだ。家に帰るまでが遠足であるように、席を立つまでが映画なのである。

 

何が言いたいかというと、私は映画を見終わってから、本当はしばらく立ち上がりたくないのである。

映画を見終えて直ぐに席を立つと、現実と夢の間で時差ボケが発生して、クラクラした状態のまま劇場を離れなければならなくなる。純粋に映画を楽しみ、映画の余韻に浸り、スムーズに現実に帰ってくるためにも、上映終了後数分はその場を動きたくないのだ。

 

でも、実際それを行うのは難しい。

スタッフだって清掃作業があるだろうし、みんなが帰る流れの中で1人だけ留まるのも、精神的に相当タフでないとできないだろう(精神がタフならやっていいのかと言われればそれはまた別の話になる)

結局、私は見た作品が良い作品であればあるほど、時差ボケを起こしながら劇場を後にするのであった。

 

本当に、上映終了後5分でもいいから、退場を先延ばしすることはできないだろうか。

私の切実な悩みである。

 

今日の1曲

星野源 – 桜の森 (Live from “宴会” 2021) - YouTube

↑私が星野源の中で1番好きな曲のライブバージョン。イントロとアウトロがひたすらにやばい(語彙力)ので皆さん聴いてください。ちなみに明日は「不思議/創造」の発売日です。どうぞよしなに……