雪降桜の巻
雪が降った。
一昨日は風も暖かくて、ようやく春が来たと思っていたのに、カーテンを開けるとそこは雪国だった。
外出自粛期間でなければ、防寒対策をして外に出て風流ぶることもできたのだが、この状況ではそれも叶わない。
とは言ってみたものの、ここで外出自粛制限が解除されたとしても、私は決して外には出ないだろう。
こんな寒い日に外に出る方がおかしい。
要は全部戯言なのだ。
ありもしない自分の姿を思い浮かべて、実際はぬくぬく布団にくるまっている時が一番安全で幸せだということを知っているから、夢の中の自分に代役を頼んでいる。
今頃全てから解放された私は、靴も履かずに外に出て、風に流された桜や雪を追いかけて走り回っているのだ。
雪は散り、桜が積もる。
異分子に包まれて、世界が真白に染まる。