逃げ場の巻
検定試験が終わって、久しぶりに昼の街を歩いた。
最近はずっと夜ばっかり出歩いていたので、白黒でしか見えていなかった木の葉が赤や黄色に染まっていたのがなんだか嬉しかったりする。
うちの街は逃げ場があっていい。
住宅街からすぐの所に木々や川などの自然があって、少しだけ時間の流れが変わるから、何かあった時に逃げ込みやすい。
別にどこもかしこも人はいるから、完璧に人目を避けることは難しいけれど、窮屈な場所から逃げ出せるだけの余裕がここにはある。
みんな同じ場所にいるけれど、お互いに干渉することはほとんどない。
小さい子供が自転車の練習をして、中高生がスケボーの練習をして、おじさんが釣りをして、おじいちゃんが歌を歌って、家族がキャンプごっこをして、おばさんが散歩をして、おばあちゃん達が集まってお茶会をして、猫があくびをして、鴨が日向ぼっこをして、魚が悠々と泳いでいる。
これらがひとつの空間に同時並行的に存在しているけれど、誰も何も言わない。
それぞれがそれぞれの楽しみ方を見つけ、お互いに邪魔しないように適度な距離を保ちながら、それぞれ満足している。
こういう逃げ場があって、本当によかったと思う。
こんな場所が、もっとたくさんあったらなぁ。