高鳴りの巻
8時半に目覚ましが鳴った時、僕は自分がなぜ早起きしようとしていたのかをすっかり忘れていた。
特に用事もないはずだし、2度寝しようかと思った次の瞬間、僕はその理由を思い出した。
僕は、エヴァを見るために早起きしたのだ。
エヴァンゲリオンの新劇場版を映画館で復刻上映することは頭の片隅に入っていたのだが、まさか各作品1週間しか上映していないとは思わなかった。
そのことに気づいたのは、昨日の午前0時過ぎで、僕は片っ端から家の近くの映画館の公開情報を調べた。
シリーズ第1作「序」の公開期間は今週木曜日まで。
僕のスケジュール的に月曜日に行くしかなかった。
なんとか家の近く(近くと言っても自転車で1時間ほどかかる所だが)で4DX版を上映している映画館を見つけた僕は、限りなく空いていそうで、尚且つ自分のスケジュールに影響がなさそうな朝イチの回に見に行くことに決めた。
本当は通常版でもよかったのだが、恐らく4DXで見れる機会はこれしかないと思い、2,100円というそこそこな金額を払っても見に行く決意をしたのである。
そこから僕は即ベッドに入り(結局2時頃まで寝られなかったのだが)、朝を迎え、自転車を漕いで、冬空の下映画館までひた走ったのだ。
映画館について、チケットを買った。
1人で映画を見に行くのは何年ぶりだろう。
そもそもあまり映画を見に行く人ではないので(基本的に毎年コナンの映画を見る以外では、ほとんど映画館に行くことがない)、映画を見ることすら久しぶりな気がする。
チケットをもらってからは、ウキウキがとまらなかった。
開場直後で最初の上映回だったため、映画館はまだ閑散としていた。
観客は僕を含めて5人しかいない。
心置きなく映画を楽しむ準備は整っている。
4DX用のやや角張った大きめの椅子に座り、上映開始の時を待った。
午前11時。
エヴァンゲリオン初号機が、発進した。