堂々巡りの巻
スマホが重く感じたから、何も持たずに家を出た。
目指すは近所の大きめの公園。
歩けば30分もかからない距離だ。
雲雀の鳴き声が聞こえる。
空が青い。
どこにでも行けそうな気分になる。
今の僕は何も持っていない。何にも縛られていない。
今この瞬間に僕が空の彼方に消えてしまったとしても、携帯電話は家に置いてきたから見つかることはない。
僕は自由だと思った。あとは触れている地面との接触を断つだけだった。
その足で公園に向かった。
しかし僕は完全に失念していた。今日が祝日だったこと、そして世の中には外出欲を満たしたい人が沢山いたことを。
公園に着いた僕は愕然とした。
公園を満たす人、人、人。
休日だということを差し引いたとしても、流石に人が多すぎる。
公園の空き地という空き地にはテントが立ち並び、公園近くの飲食店には長蛇の列ができていた。
僕は人混みを避けるように、道を選んで歩く。
ふざけるな。僕の安息の地にいけしゃあしゃあと入ってきやがって。今まで見向きもしてなかったくせに、こういう時だけ良いように使えると思うなよ。
だいたいお前らみたいに呑気に出かけてる奴が多すぎるんだ。休みの日だからってわざわざ行楽スポットまで出かけて人混みを形成している奴らなんか、みんな死んでしまえばいいんだ。そして僕だって、僕自身だってそれに巻き込まれて死んでしまえばいいんだ。
そんな独り言が脳内を巡る。誰にも当てられない怒りが、僕の中をぐるぐる回っている。
人気に吐き気がして、僕は公園を後にした。
そして、ちょっとだけ遠回りをして家に帰った。
結局、僕はどこにも行けなかった。
今日の1曲
FIVE NEW OLD - Don't Be Someone Else【Official Music Video】 - YouTube