独り言

本当に独り言です

雨脚の巻

6限終わりに降り出した雨は、

駅に着く頃には土砂降りになっていた。

さっきまでフードを被って雨の下でじゃれあっていたカップルが、

それどころじゃないと言わんばかりに全速力で走って駅にやってくる。

繋いだ手に滴る雨が妙に生暖かい。

時は6月、

季節は4月。

 

僕が昼間に見たあの青空は偽物だったのだろうか。

2限が終わる頃には青々としていた空も、

3限が終わる頃には色を失ってしまった。

 

太陽が出るといかに葉の緑が濃くなっているかがよくわかる。

雨は冬の間に茶色く汚れてしまった葉を洗い流し、

太陽が薄い緑色をしていた葉を丁寧に磨く。

クリスマスのライトアップももう半年前か。

つまらない電飾がなくても、

お前はもうひとりで輝けるもんな。

 

雨は足音も立てずに、

どこからともなくやってくる。

雨脚が強いって言うけれど、

足音が聞こえるのはいつも雨が降り始めた後だ。

 

雨が降ったところで歩き方を調整するような脳を持ち合わせていないので、

傘をさしながら歩いても必ず足が濡れる。

自分の歩幅に対して傘が小さすぎるんだよな。

毎回つま先はびしょびしょだし、

アキレス腱のあたりもびしょびしょになる。

 

ももの裏にへばりついた長ズボンを引き剥がすように急いで歩く。

こうして歩いている間にも雨はどんどん強くなっている。

駅の雨樋の端っこからホームに水が流れ落ちて、

あっという間に滝が出来上がる。

どうせなら僕の煩悩も水に流してほしいけど、

ホームでやるのは少し違うな。

 

まるでスーパーボールかのように、

雨が地面に当たって跳ね返ってくる。

これじゃあホームについている庇も意味がない。

駅に到着した電車の屋根に打ちつけた雨が、

勢い余ってホームになだれ込んでくる。

せっかくホームで休めると思ったのに、

電車に乗る頃には全身びしゃびしゃだ。

 

ここ数日の雨は、

粒が大きくて見ていて気持ちがいい。

いつもは雨とひとくくりにされてしまうけど、

彼らもひとつひとつの雨粒の集まりなのだ。

空から落ちてきた無数の雨粒が、

コンクリートに当たって弾け飛ぶ。

その美しさをカメラに収めようと思うけど、

どうやら僕のカメラは雨を雨としか写せないらしい。

やっぱり一眼とか買った方がいいのかな。

雨粒を写すのには、

それなりの眼がないといけない。