知識の巻
いつもと違うところから光が漏れてるような気がしてふと夜空を見上げたら、
十日目の月が顔を半分隠して夜空に浮かんでいた。
確かに最近雨が降ったり雲が空を包んで離さなかったり新月の期間が被ったりして全然月を見ていなかったけど、
まさかなんとなく明るい気がするという理由だけで月に気づけるとは思わなかった。
それほど月はいつも光り輝いているんだなぁ。
月の明るさって何等級だったっけ。
高校の地学でやったはずなんだがなぁ。
ゼミの大会でバレーボールをやるので、
友達と集まって練習してきた。
久しぶりに運動をして、
ちゃんと走ってちゃんと飛んで、
ちゃんと汗をかいた気がする。
ボールを受けすぎて痛めた右腕を擦りながら歩く。
内出血で青くなった腕は、
アンダーパスの自信に繋がる。
言ってもド素人だから、
そんなに拾えるわけじゃないけどね。
本番まであと1週間。
やらなきゃいけないことは多い。
電車に乗って目を閉じて、
目を開けると終点だった。
誰もいない車内を見回して、
ようやく自分が降り損ねていることに気づく。
半分寝ぼけながら開いているドアをくぐり抜け、
気づくとホームで乗り換える電車を待っている。
これはほんとに最近多いんだけど、
全然何も考えていない無意識のうちに、
電車を乗り換えていたり、
電車を降りて家まで歩いていたりする。
家までの帰り道とかは長期記憶に分類されるから無意識でも家に帰れるのは知ってるし、
酒飲みが酔っ払って記憶をなくしてても家に帰れる理由もそういう理由なんだけど、
実際それをやってる自分に気づくとゾッとするよね。
目の奥を絞るようなタイプの頭痛に悩まされながら家の最寄りのスーパーまで歩く。
梅雨が始まると同時くらいに咲き出した青色の紫陽花が、
小さな群れを成している。
確か土壌が酸性だと紫陽花は青くなるんだよな。
ってそんなことを考えたい訳じゃない。
どこかで知識を得ることを畏れていて、
知識を得ることで見える世界より、
知識がないことで見える世界に憧れている気がする。
僕が知りたい知識は理由とか根拠じゃなくて、
感覚とか表現の知識なのに、
そういう知識はあらゆるところから寄せ集めてこないと獲得できない。
その手間を惜しんでいる人間がこんなことを言うのは、
ただのないものねだりに過ぎない。
とりあえず、
辞書を引くところから始めてみようかな。