ライブの巻
2週間とちょっと前、私は東京ガーデンシアターにいた。
久しぶりのライブ。
会場前には多くの人がいて、しばらくぶりの人混みに、心は落ち着かなかった。
正直、ここに来るかはめちゃめちゃ迷った。
友達に誘われたとはいえ、一応緊急事態宣言の最中だったし、本当は行くべきではないのではと、ずっと悩んでいた。
ただ、一方でこのままだと一生どこにも出かけられないのではないか、という不安もあった。
ちょうど陽染者の数も減ってきていたし、運営だってきちんとコロナ対策はしていた。
この状況でも出かけられなかったら、私は今後ずっと部屋に閉じこもって生きていかなければならなくなるかもしれない。外がコロナ以前に戻っても、私は元に戻れないかもしれない。
それは嫌だ。そう思った。
そして、この段階で一度外に出てみようと、そう決意したのだった。
会場に入って、開演を待つ。
人はたくさんいるが、席は1つずつ空いている。
会場もかなり広く、日頃の通勤電車よりも密度は低いだろう。
観客も皆静かに、公演が始まるのを待っていた。
開演時間になった。
会場が暗くなって、舞台にaikoが現れた。
以前であれば、みんな大きな声でコールをしたり、ステージにいるaikoに話しかけたりしていた。
しかしその日は、みんな黙って、必死に手拍子をしていた。
ただひたすらに、手拍子をしていた。
アンコールの直前。
暗い会場で拍手が沸き起こり、そして静寂が訪れた。
恐らく4000人はいる東京ガーデンシアターが、全くの無音になった。
暗闇の中、一人一人の心臓の鼓動が聞こえそうだった。
その光景は、まるで宇宙みたいだった。
ライブが終わって、2週間が経過した。
今のところ私に体の異常はないし、同じ公演の誰かが感染したという情報も入っていない。
ひとまず、私の緊張の糸は解かれた。
今回は無事だったが、次もそうかは分からない。
だから、私もまだすぐに活動量を増やすということはしないつもりでいる。
しかし、このままずっとこもっている訳にもいかないし、今後は周りの状況も見ながら、ちょっとずつ外に出るようにして行こうと思う。
道はまだまだ長い。私も、まだ頑張らなければ。