新幹線のニュースの巻
今更ニュースを読んで知ったのだが、今はもう新幹線の車内の電光掲示板にニュースは流れていないらしい。
なんだか少し悲しい気持ちになった。
私が新幹線に乗るのは、ほとんど盆と正月に実家に帰省する時くらいである。
東京から大阪まで、片道約2時間半。大丸のデパ地下で崎陽軒のシウマイ弁当を買って車内で食べるのが恒例行事だった。
高校入学まで携帯も持たず、ゲームも制限されていた私にとって、新幹線の中はとても退屈だった。
新横浜を過ぎたあたりで弁当を食べ終えると、そこから2時間は本当にやることがない。子供であるという最大のアドバンテージを活かして窓際の席を確保することはできても、窓から見えるものは熱海の海と富士山と京都の五重塔以外、ほとんど住宅街か田んぼかトンネルで、ろくに見るものもない。
結局私が車内でやることといえば、借りてきた本を読むか、寝るか、電光掲示板に流れるニュースを読むかくらいであった。
電光掲示板に流れるニュースを読むのは、私鉄に乗っている時に見える街の看板を片っ端から読むのと似たような感覚であった。
次のニュースは朝日新聞か毎日新聞か産経新聞かを予想するだけでも楽しいし、同じニュースも新聞社によって文面が変わったりする。次は何かと待っていたらクラレとか日清紡の広告だったりして、読みを外される面白さもあり、そんなことをしている間に名古屋に到着。今日の天気が流れて甲子園の結果とか様々なニュースが流れている間に、岐阜羽島を通過して京都に到着といった具合である。
電光掲示板の端から流れてくるニュースを目で追いかけて、どれだけ早いタイミングでニュースの内容を読み取れるか、という「ニュース・イントロドン」も勝手に開催していた。最初の3文字くらいで内容が予想できた時は、めちゃめちゃ優越感があったことを覚えている。
このように、私にとって電光掲示板のニュースを読むことは、退屈な車内における1番の娯楽であった。
今ではスマホを持ち歩くようになり、ニュースだって手元で見られるようになった。
ただ、電光掲示板のニュースには、スマホで見るニュースとは別の趣があるように私は思えてならない。
電光掲示板のニュースがなくなった今、果たして私は退屈な車内でどこを見ればいいのだろうか…