祭の巻
その日、東京は猛烈な雷雨に襲われた。
遠くで聞こえていた雷鳴が、段々近づいて来たなと思ったが早いか否か、大粒の雨が降り出し、辺り一面は灰色に染まったのだった。
最近のんびり暮らしていた私にとって、その雷雨はある意味イベントでもあった。
こんなに雨が大量に降って、雷もひっきりなしに落ち続けている状況は、果たしていつぶりであろうか?
そう考えると、段々この状況が楽しく思えてきた。雨音が人の歓声に、雷鳴が祭囃子に聞こえてきて、私はゲリラ豪雨の中に、祭りの人混みを見たのであった。
立て続けに、テンポよく落ち続ける雷。それに沸き立つように大きくなる雨音。私はもう完全にテンションが上がって「いいぞ!もっとやれ!!!」という心持ちで窓の外を見続けた。
ひとしきり雨と雷が降って、小さな窓から晴れ間が見えた。
雨雲が去って晴れてゆく空を見た時、私は祭りの後のような寂しさを感じたのだった。