独り言

本当に独り言です

作家の巻

小学生の頃の将来の夢は、小説家になることだった。

 

多分これは別に小説家じゃなくてもよかったんだろう。

脚本家でも

演出家でも

詩人でも

俳人でも

画家でも

クリエイターでも

とにかくそういったことがやりたかった。

僕は何かを作る人になりたかったのだ。

 

自分の頭の中で湧き上がるイメージを、全部具現化できたらどれほど楽しいだろうか。

空、雲、風、主人公が振り向くタイミング、少し寂しそうな横顔、無音で動く唇、まっすぐな目線、蕾のまま枯れてしまった花。

何も偶然は起こらない。

将棋盤の上に並べられた駒のように

テーブルの上に並べられた断片たちを

決められた終わりに向かって組み立てる。

その快感を1度味わえば

決して戻ることはできない。

その快感が

僕の創作意欲を掻き立てる。

 

独裁者のような文章になってしまったが、

作家というのは小さな独裁者である。

自分の領土の中で、

自分がやりたいことだけをやる。

思い通りにならないことをやる必要はどこにもない。

自分の中だけに描かれた完成系を目指して

筆をとる。

ペンをとる。

カメラをとる。

そうして完成した作品の中で

作家は独裁者になるのだ。

排他的で構わない。

やりたいことはやらなくていいし

やりたいことはなんでもできる。

 

自分の独裁に対して外野からやじを飛ばしてくる人は死ぬほどいるが、

我々独裁者は屈してはならない。

壁の外にしか立てないやつに、

壁の内側をとやかく言う権限はない。

独裁者に物申せるのは

内側にいる参謀だけなのだ。

もしそこでやじを飛ばされて

その心無い言葉に屈してしまうのならば、

そいつに独裁者の資質はない。

 

独裁を続けるためには尋常でないメンタルが必要だ。

たとえ外野に何を言われようとも

それでどんなに自分が傷つこうとも

人前に出た時に自信を持って

「私は間違っていない」と言わないと

誰も我々独裁者には着いてこれない。

絶対的なリーダーという地位にすがりつくことでしか、

我々独裁者は生きていくことができない。

我々は大変な権力者であり

また時に我々は非力である。

 

頭の中で思い浮かぶイメージが全て現実に存在したら

どれほど嬉しいことだろうか。

その喜びを知るために

僕はここで鍛えなければならない。

その完成系を自分の手で作り上げた時、

僕は独裁の国から抜け出せなくなるのだ。