模写の巻
小学生の頃に書き溜めていた、小説ノートが出てきた。
昔から本を読むのが好きだった私は、幼心なりに自分でも話を作ってみようと思っていたらしい。
B5のノートを横にして、そこに縦書きでびっしりと文字が書いてある。
ノートは全部で2冊あり、そこには全部で7つほどの作品が書き留められていた。
しかし、どれもこれも導入しか書かれておらず、本編に到達していない。
途中で話を書くのを辞めてしまったのは、私が単純に飽き性で、1作を作り込むのに飽きてしまったのもあるが、一番の理由はおそらく、書いている小説が当時読んでいた他の本に似通ってきて、つまらなくなってしまったからだろう。
今読み返してみても、なんとなく元になった話は予想がつく。
ある話は、ホラーバスという児童向けホラー小説にそっくりだし、SPECのような異能力モノを無理やり学園モノに落としこもうとして、諦めた話もある。
ワンピースを読んで航海モノを書こうとしたり、ハリーポッターにハマって魔法を使ったり、はたまた星新一のショートショートを読んで、それをそのままパクったような作品まで出てきた。
当時の自分には、オリジナリティーというものが全くなかったし、読んだものが全部書いているものに出力されてしまうせいで、ノートに残っていたのは、オリジナルの小説というか、ほとんど模写に近いようなものばかりだった。
だが、それでよかったのだ。
オリジナリティーを生むためには、既存のものの模写も十分な訓練になる。
むしろ既存のものをたくさん見て勉強して、自分の中にストックを作ってから、新しいものを考えればよかったのだ。
だから小学生の私には、ぜひとも小説の“模写”を続けてほしかった。
今となっては、もうどうしようもないけれど。