目撃の巻
闇夜に舞う何かを目撃した。
大きさは分からないが、恐らく鳩よりは小さい気がする。
辺りが暗かったせいでよく見えてないけれど、飛んでいる姿は鳥にも蝶にも見えた。
それらはとてもすばしっこく、闇夜を縦横無尽に駆け回っていた。
何かを目指して飛んでいたのかと思えば、急に旋回して私の頭上を掠めることもあった。
臆病な私は、その度に反射的に身構えてしまい、せっかくその何かが近づいてきても、視界に収めることはできなかった。
私はもう少し彼らを観察してやろうかと思い、その場に立ち止まった。
辺りには木々が生い茂り、彼らは枝の間から飛び出したと思えば、しばらくすると木の影に姿を消してしまう。
全くもって要領が掴めない。
これがもし仮に宇宙人の一種であれば、一躍私は時の人になれるかもしれないが、恐らく彼らは宇宙人ではない。
地元に空飛ぶ宇宙人の集団というニュースは、それはそれで面白いかもしれないけれど、私は別にそういう非日常感は求めていない。
しばらく彼らを眺めた私は、結局彼らの正体を暴くことができず、季節的に早めに飛来してきたツバメなのではないか、という適当な仮説を立てるだけ立てて帰ることにした。
今度は昼間に訪ねてやろう。
答え合わせは、その時までのお楽しみである。