夏との邂逅の巻
今年初めて、暑いと思った。
今年に入って、東京も既に何度か夏日を記録しているが、これまではどちらかというとカラッとした暑さだった。それに、そもそも私は5月中旬頃から半袖半ズボンを導入していたので、大して暑さを感じてこなかった。
しかし今日、私はようやく暑さを自覚した。
時刻は15時。授業の提出課題を終えて、一段落ついた時であった。
私の部屋は西向きなので、夕方になると日が部屋の中に差し込んでくる。日が入ると部屋の温度が上がったり、本が日焼けしたりするので、日が傾く前には必ずカーテンを閉めている。そしてそれは今日も同じだった。
カーテンを閉めたとはいえ、窓まで閉め切った訳ではない。風の通り道を作るために、窓自体は少しだけ開けてあった。そして、そこから十分な風が部屋の中に入ってきていた。
これだけ快適な部屋、さらに半袖半ズボンときて、私は暑さとは無縁の状態であった。
だが、夏は意外と私のすぐ側まで来ていたらしい。課題を終えた私は、背中に1粒の水滴がついていることに気がついた。
紛れもなく、私の汗だった。
私が外出していて直射日光に晒されていた場合や、あるいは何かしらの運動をしていた場合、この汗は容易に説明できる。
しかし、その時の私はカーテンが閉じられた部屋で、椅子に座ってパソコンで課題をしていただけである。直射日光を浴びた訳でも、激しい運動をした訳でもない。
その時、部屋の中に重い風がのっそりと入ってきた。
そして、その風は、じめじめしている手で私の頬を撫でたのであった。
それは、紛れもなく夏の暑さだった。